今、全国の会計士と一緒に会社法の解説の本を出版しようと原稿を手分けして書いています。会社法の規程を改めて読みますと、第5章株式会社 計算等という部があり、株式会社の会計は一般に基本会計に従うものとする、株式会社は・・・適宜に会計帳簿を作成しなければならない、株式会社は各事業年度に関わる計算書類(貸借対照表、損益計算書、その他株式会社の財産及び損益状況を示すために必要且つ適切なもの・・・)、及び事業報告書並びにこれらの付属明細書を作成しなければならないとされています。
旧商法にも同じ規程があります。
そして、税法には それらの決算書を、法人税の申告書に添付して提出しなければならないとされています。
こういう法律で規制されているから決算書を作るのかといえば違います。経営者の方は意識しないかもしれませんが、ただなんとなく帳簿を作り決算書を作っているはずです。
なぜなのでしょうか。税務署申告に必要であるということは間違いありません。会社を作って規模が小さい段階では、税務申告のために作るという目的が大きいでしょう。更に、銀行等の借入れに必要なため作っていくということもあるでしょう。そのために経理担当者を採用したり、会計事務所に頼んだりする。そのあたりが多くの中小企業の経理のスタートラインでしょう。
ところが、日々の売上の帳簿、売掛金の帳簿、買掛金の帳簿、お金の出し入れの帳簿、これらは必ず作っているはずです。なぜなら会社の財産を守るために作っているはずです。
そして、いやしくも厳しい経営環境の中で自らの財政状態、財産を守り、財政状態を把握し、実際にどの程度儲かっているのかを掴んでいくために、即ち経営のために作るという形に変わっていくはずです。
経理というのは、経営者の必要に応じて作っていくというのが正しいと思います。経営者の役に立たない経理をいくらやっても意味がないと思います。
こういう風になぜ思うかというと、実はある会計事務所のグループが特定の会計ソフトを用いるようにお客様に勧める運動をやっているのですが、そのこと自体が良い悪いというわけではありません。しかし、その専ら勧める内容が特定の会計ソフトを使うということに重点が置かれ、その結果、経営者は万が一すぐ経理がわかるのだというメリットの方に惹かれて会計ソフトを入れている。しかしながら、会計ソフトを入れれば経理が正確に出るのではなく、正確に出るためにはそれなりの仕組み、どのようにして毎日のデータを集め、どのようにしてそれを入力し(当然入力する作業を軽減する仕組みが必要になります)、且つどのようにその出てきた資料が正しいのかを検証していくという手続きがない限りはその出てきた資料がいかに早くなんらかの決算書と思われるものが月々早く出てこようとも役に立ちません。
最近何件か私どものお客様になられた会社にそのようなソフトを使用されていた方がありました。その種のソフトは大変堅い、逆に言えば不正を許さない形になっています。それはいいのですが、肝心の勧める方がきちんとこのように使うんですよ、このようにすれば早くデータが集まるのだという、いわゆるソフトでもないハードでもないノウハウという部分の指導がないために経営者の方が大変不信感を持っていました。逆に言えば、不信感を持ったから会計事務所を替えて私どものお客様になって下さったわけです。あまりにもその評判が悪いので、私どももそのようなグループの一員に入っているということが恥ずかしくて言えないような状況でした。
話が横に逸れましたが、本気になって経営者に求められる経理、経営者の会社が潰れないように見守っていき、そして更にもっと儲かるように応援していくための道具としての経理の指導に努めていきたいものだと思います。