平成18年3月の確定申告並びに平成18年度税法改正についてセミナーを行った。
そこで説明したのが、お年寄りの人(65歳以上の方)でアパート所得や年金が所得のメインの方は今年大きく負担が増えるということだ。
実例でしゃべってみよう。
昨年度の不動産所得が490万円、年金が270万円であった方、そして色々な控除が140万円、課税所得合計9480万円について所得税はいくらかかったか。
実は、かかる所得税は63万円、これに2割の特別減税がついて504,000円というのがその方が昨年度払われた所得税であった。
50万円というと個人の年寄りの人からすれば、かなり大きい。なにせ年金が270万円、不動産所得が実質530万円合計で800万円くらいの実質的な所得でこれにかかってくる実質的な税金が所得税で50万円、住民税が35万円くらい、合計で90万円近い税金である。かなり重い税金と言えよう。この他、国民健康保険や介護保険で約50万円程度別に負担がかかってくる。
このような方について、平成17年度分の確定申告書を3月15日までに出すのであるが、どのくらい税金が増えるのであろうかという話である。
実は、税負担としては所得税が約17万円、住民税が12万円増えるというのが試算した結果であった。約30万円近く増える。これは非常に大きな負担増である。
では、この増税はいつ決まったのかと言えば、平成16年度や平成17年度の税法改正で決まっていました。従って最近の新聞記事には載っていない。実際には確定申告へ行ってみてびっくりという話になるだろう。
どういうところが変わっているのか。
アパート所得については、複式簿記できちんと帳簿をつけていない限り、今まで受けられた控除(本当に税金にかけないという数字)が45万円から10万円に下がる。つまり、ほとんどの人は帳簿をつけていないであろうから、これだけでも自動的に実体は変わらなくても課税所得は35万円増える。
では、この帳簿は簡単につけられるのか。実は、いわゆる複式簿記による処理なので、パソコンを持っていれば簡単にできるだろうが、アパート管理者はお年寄りの人が多いので実質的には難しいと言える。更に、そのようなことを外注するということは極めて困難であろう。
私どもの事務所でも以前のおつきあいのあるところには10万円の手数料で帳簿をつける仕事を引き受けたが、本当のことを言うと採算が合わない。しかし、永年のお付き合いからとりあえず提示だけさせていただいた。
更に、公的年金270万円を受けているが、実は年金の270万円のうち税金のかかる対象は昨年は130万円だったが、今年は150万円に上がっている。これも年金そのものにかかるのではなく、公的な年金のうち税金をとる対象となる金額は年金金額のうちからひとつの計算式による金額(公的年金控除)を引いたものというやり方である。その計算式がちょっと変わったということである。
更に、お年寄りの方について言うと65歳以上の方については50万円は税金の対象にしない(これを老齢者控除と言います)と言っていたが、この50万円も廃止になった。
従って、不動産関係の計算式の控除の関係で35万円、年金の関係で20万円、老齢者控除で50万円、合計100万円ほど所得が増える。これに伴って税金が増える。
しかも、地方税については平成17年1月から12月までの所得をもとに平成18年度の地方税が決まる。ご承知のように平成17年の地方税は定率減税が半分となっているのでそれに伴う税金の負担増もあるわけである。そして、約30万円ほど増えたというわけだ。
それだけではとどまりまらず、国民健康保険料は地方税の金額によって決まるので、地方税が増えると国民健康保険料が最高限度63万円までひき上がるということを意味する。そして、更に地方税が高い方は老人医療の窓口負担金が1割から2割に上がる。これは地方税の税額に連動するということである。
このようなことは、実は2年位前からルールが変わっているのでわかっていたことだが、わかったからといってどうにかできることでもないので税負担が増えますよというアナウンスだったが、実際にこのような事態がくるとかなりお年寄りにとってはショックだろう。もともと所得がほとんどない方にとっては何も関係ないが。お年寄りでも所得のある方、年金をもらい、不動産にアパートや貸店舗を構えている方にとってはかなり税負担が増えるという話である。
日本の国は債務超過が激しい。平成18年度予算を見ると80兆円のうち、約30兆円は国債の発行でまかなうという形になっているので、とりあえずそのうちの10兆円弱についてはなんとか税収を増やしていこうというのが国の方針である。
こうやって見ていると税制のうえではますます増税策が増えてくる。しかも消費税の引き上げという正面切っての増税は国民の反発が強いのではっきり言えば選挙においては惨敗する可能性が高いのでなかなかできない。そうすると姑息な手段、大きく取り上げられないやり方、一定の方しか税金が増えないやり方というのが色々と今後とも行われていくものであろうと思う。
その一つとして導入されたのが、実質一人法人課税というやり方である。
これについては、次回説明したいと思います。