不動産所得の申告と税務署の目のつけどころ
今年ももう終わろうとしています。個人の方にとっては1月から12月までの所得について、来年の3月15日までに確定申告をしなければなりません。
アパートや駐車場をお持ちの方々も毎年不動産所得の申告のために資料を集める時期が近づいています。
今回は、不動産所得の申告後、どういうところに税務署は目をつけるのかということをご説明致します。
【収入について】
●家賃収入
借主が法人である場合、賃料や権利益金等についても支払調書という文書を税務署に提出することになっています。そして、その資料は家主さんごとにまとめて会社から提出されますが、その家主さんを管轄している税務当局に提出され、資料として使われることになっています。特に高額の場合については所得税の申告書との照合も行われているようです。
●敷引き
最近、福岡の税務当局が厳しく目をつけはじめたのが敷金のうちの返金しない部分の取扱いです。敷引きと呼ばれている制度についてです。
入居者が入ったときに5ヶ月分の家賃をもらう。しかし、将来退去するときに返金するのは3ヶ月分だけで、2ヶ月分は不動産の現状修復費用としてもらいますよという契約です。実際に修繕費がいくらかかるかは関係なく、敷金の2か月分をもらうというケースが多いと思います。
このような場合、現在の税務当局の取扱いは、「入居時に敷引きの2ヶ月分を家賃収入として計上しなさい」です。通常、一般の家主さんは入居者が退去するときに敷金3ヶ月分だけを返し2ヶ月分を家賃収入とし、修繕費2ヶ月分の実費が発生するという感覚だろうと思います。
税務署の取扱いは入居時に2ヶ月分の敷引き分の収入、退去時には既に計上していますから退去時には収入は計上しない。退去時に実際にかかった修繕費が計上される。もし、入居者が退去しても、すぐに新たな入居者が決まれば結局敷引きの計上を入居時にするか、退去時にするのかの違いで影響はないのですが、入居者が多い場合(新築の場合など)は大きな影響が出てきます。最近このことについては厳しく指導が始まっています。
【必要経費について】
●奥様への専従者給与
青色申告の方には、奥様への専従者給与という形での所得の分散が認められています。これについては、実質的に何をしているのかということ、それに見合った給与なのかということ、つまり何もしていないのに給与が高すぎるのではないかということが問題にされるケースがあります。
●家事関連費
家事関連費というのは、税務署の用語です。不動産所得の計算上必要経費にされているがその内容から見て個人的な経費、アパート経営に必要な経費ではないのではないかということで税務当局が指摘する事項です。よく指摘を受けるのは、自宅分の固定資産税が紛れていないか、個人的な交際費がアパート経営のための交際費の中に紛れていないか。アパート経営のための交際費というものはなかなか曖昧になりやすい問題です。
もう一つ、車両関係費があります。不動産所得を上げるために車両は必要ではないのではないかというのが税務当局の見解です。
実際には色々この家事関連費については微妙なケースがありますので、結局は税務署との交渉というかたちになります。
なお、個人の不動産所得者に対する調査は会社に対する法人税の調査ほど頻繁にはありません。やはり、会社に比べればもともとの売上そのものが低いので、所得逃れが少ないということでしょうか。