ある会社の社長と話す。
その会社で労働基準監督署の調査があり、従業員の残業状況の集計確認が甘いとの指摘を受けたとのことである。
残業時間を正確に把握、集計していない。
従業員からの自主申告の形で残業時間を集計している。タイムカードなどをもちいていない。状況証拠から見るに実際の会社に社員がいる時間とは異なる。
会社は 従業員の労働時間を正確に把握する義務がある。それをみたしていないとの指摘を受けたとの話である。
このことによって問題点が2つ出されている。残業時間に対する手当支払の問題と従業員の健康管理の問題である。
最近過労死という言葉さえ聞かれるほど残業の問題は多い。
ただ、社長が自分が若いときは仕事が面白く、また充実感もあって、残業するなと言われてもどんどんやっていた。仕事はやらなければならないときがある。そうしなければ自分も会社も伸びないときがある。
どうも違う。社長が感情的に納得いかないという話であった。
私も全く感情的には同感である。
日本の国が推し進めている対策はどうも自分で自分の首を絞めているような感じがする。
すなわち、今現在日本が世界的立場に立って、有利な立場にあるとは思われない。
20年近く経済の発展度は極めて低い状況にある。生産労働人口の増加は見込めない。モノを作る労働という意味では、中国やインドという労働力の巨大なディスカウンターが存在している。
日本の企業の製造業も多くは人件費のディスカウンターの国に工場を移している。
とすれば、日本全体としてそれらと競合するためには、
①労働時間を増やす、残業時間を増やす
②中国インド並みに給与水準を下げる、
③技術レベルを上げる、
の3つしか方法がないのであろう。
①については、働く時間を増やすということにおいて言えば、目の色を変えて罰則まで設けて厳しく制限している。
バブルが終わったときの労働時間に比べると現在は1割程度少なくなっている。しかも、企業に益々残業をさせないように残業手当の法定割り増し料率を上げるということである。
厚生労働省の勤労統計調査を見ていると2007年の年間労働時間を100とすると1990年は114、10年前の1997年は104というように労働時間は減っている。
労働時間の面では大いにゆとりが出てきていて国民が喜んでいるはずである。実際には生活が苦しくなったという人が増えていると報道されている。
①労働時間を増やす、残業時間を増やす という対応策はとれない。
とすれば、一般企業が選ぶのは人件費を下げるということである。これはいわゆるパートや派遣労働者の活用によって実現されている。国がどんなことを言おうとも経済性の面からそれでやっている。会社がつぶれるよりはましだからである。
③の生産性を上げるということについて言えば、言うが易しとはこのことである。
サービス業における生産性の向上とは何なのであろうか。
従業員1時間あたりの売上高という意味であれば売上高の取れる仕事を行うという話になる。全部の企業がそれを目指せば向上することは無理である。
今、日経新聞の私の履歴書で連載されている電通の方の記事の時代と明らかに時代が違うということを改めて強く感じる。
サービス業に属する仕事をしている一人として時間 コスト 生産性はいつも心がけている課題でもある。