覚悟を決める
『大暴落で今後どうなるのかどうかわかりません。少なくともはっきりわかっていることがあります。景気は著しく悪くなるだろう。』
今、はっきりしていることは、株価の下落によって多くの金融機関の有価証券の含み益が減少したということです。単純に言うと、自己資本が減少した。上場会社の規則では、有価証券は時価で評価されることになっており、それは損益計算書には出てきませんが貸借対照表では有価証券評価差額として純資産の部に取り入れられています。すなわち、たとえ売却しなくても銀行等の所有している株式などの時価が減少すればその分帳簿上の純資産も減ることになっています。そして帳簿上の純資産の何倍かを貸出すことができるという形になっています。
従って、仮に1000億円含み益がなくなれば自己資本の10倍お金を貸していた銀行は1兆円の貸し出しを減らさなければならないということになります。別にこのルールは日本だけのものではありませんから世界中でこの問題が起きるとされています。これは極めて大きな影響を世界的に与えます。
今後景気が悪くなるのは確実であるというか、もともとサブプライムローンが発覚したのが昨年の春ですから、それ以来アメリカではこの問題がずっと問題視されてきていました。そこで米国ではトヨタですら車の売上が減少し、結果的に相当の日本の工場の人員の削減(期間工を中心とする)が行われているとのことであります。また、自動車産業は裾野が広いので、トヨタなどに製品を納めていた各業界の部品メーカーも減産だとされています。少なくともここでも相当の不景気になるということがわかるわけです。
これは別に自動車産業に限らず一般的に行われることですから相当な不景気になるのは間違いありません。そして、当然ながら銀行はもともと純資産が減少しているのですから貸し出しを減らさざるを得ませんし、不景気ということで貸し出しに慎重にならざるを得ません。
また、地銀の再編が進んでいます。これからさらに本格化していきます。まして、メインだった銀行が吸収される側ですとかつての銀行の合併時代のように極端に融資制度が厳しく変わることがあります。従来なら貸してくれていたはずが貸してくれなくなるということが十分予想されます。
今、銀行の融資も担保がどうというよりも、利益が出ていないとなると格付が極端に低くなりますので、融資ができなくなることになっています。仮にいくら銀行のトップと親しいといっても融資にはあまり関係がありません。というか、そのような情実による融資を行った場合にはトップと言えども損害賠償の対象になっています。銀行の融資制度1つとってみてもいわば急に変わったわけではなく、かなり前からの話ですが、実際に表に出てくるときには急に変わったとしか見えないわけです。
今のように急に環境が変わる時代、いわゆる激変期は極めて真剣に厳しく状況を認識し、堅め堅めの悪い方を想定した対応策が必要です。大企業は極端な削減をしています。
最近弁護士さんが受ける相談でも本当に資金繰りの問題、厳しい状況の問題が増えているとのことです。事務所でもリスケジュールや民事再生などの仕事が増えています。腹を据えて対応していかなければならない時代です。