租税回避行為という概念が 税務当局にあります。
税法には書いてありません。租税法律主義といいながらおかしな話ですが税務当局から税金を取るといわれてびっくりして税務当局と訴訟をする人以外には、税務当局と意識的にけんかを仕掛けようとする人はいませんから実際は確実に存在している税法上の問題です。
租税回避行為とは経済的な合理性がないのに通常用いられないような取引形式を納税者たる個人や会社が採用することにより納税を免れたり延期したりする行為とされています。税金が安くなることはそのような行為をすることの正当な理由とはならないということです。ところが問題は法律に書いてないので具体的に何が租税回避行為になるのかが事前にはっきりしない。人によって意見が違うということです。
これに関連して租税回避商品というものがあります。 租税回避商品とは、税負担を軽減すること以外にそのような商品を購入したりすることがあり得ないと思われる金融商品?のことです。
昨年の3月16日付の読売新聞において、国税当局が航空機リース事業に投資するレバレッジドリースを「租税回避商品」として一斉課税に踏み切ったという記事が記載されました。
また、住商リースが主体となった「船舶リース」への個人投資家がやり玉にあがった旨の新聞報道もありました。
スキームそのものは、どちらも同じです。航空機(もしくは船舶)を共有で個人が所有する、そして、それを会社(航空会社など)に貸すリースです。
収入金額は一定ですが、経費は減価償却などの関係で当初は多いが、将来は少なくなる。つまり、損益は、当初は赤字となり、将来は黒字となる。リース期間を通算すると、投資額に多少の利益がつく可能性が大きい。
当初の事業収支がマイナスとなって、その赤字を他の所得と通算できるために節税メリットがあるというものです。
ただし、レバレッジドリースの事業収支は赤字の数年間を経過した後、今度は一転して黒字に転じるわけで、全期間保有していると仮定すればニュートラルな商品であることもまた確かです。
つまり、単純に言えば、今は儲かっている人でも、将来はわからない。そして急カーブの累進税率という所得税の仕組み(なにしろ給与年600万円の人の税額は28万円、10倍の給与6,000万の人の税額は2,350万円(84倍))です。
そうすると、所得の高いときに少しでも所得を下げ、将来に繰り延べたいと思うのは人情です。
その後の経過が気になっておりましたが、文芸春秋7月号において、「国税VS.税逃れファンドの暗闘」としてその後の続報が報じられております。
この記事でも指摘されていますが、税務調査で課税対象として追徴できたのは、結果としてごく一部の期間に限られており、しかも前述した両リース会社は、弁護士団とともに徹底抗戦する構えだということです。
徹底抗戦するのは当たり前だと思います。税法を素直に読むと、これらのリースの処理は正しい。税法に従っています。過去も同じような金融商品はあったし、前述の扱いで問題視されてきませんでした。
同じような例では、リースマンションというものがありました。家賃収入より支払利息や減価償却などの経費が大きい。投資家は将来のリースマンションの値上がり益や借入金完済後の利益を楽しみにしていました。これについては、税法を改正してそのような赤字を認めない形としました。税法を変えて対処しました。
ところが、今回のケースでは利益を繰り延べる目的で行うこと自体が税法上おかしいとされています。故に節税となること自体が不適切である。税法解釈の問題です。税法上の条文解釈を過去にさかのぼって変更してきているわけです。税法の変更ではありません。
私はこのような規制は、税法解釈の変更ではなく、税法改正で対応すべきだと思います。租税法律主義と憲法に書いてあるようですが・・・。
文芸春秋の記事では、国税庁長官が米国の税務当局から「米国では、このような租税回避商品が多くて困っているが、日本ではどうか」と質問され、国税庁長官がしっかりやれと部下を叱ったのがもともとの始まりと述べられています。
法律による課税ではなく、人治による課税なのでは・・・。
米国では「法律改正」により対応しているとその記事は述べてありますが・・・。
この記事をみて、ああまたか、というのが感想です。おそらくこれは税務当局の意図的な情報操作でしょう。
税金計算の説明もおかしいし、当初税金の減る部分のみピックアップして、逆に将来増える税金のことも触れていません。
しかし、どちらにしても税務当局はマスコミに載せることで目的は達したことでしょう。だれも税務当局ともめたいとは思いませんから、今後同様のリース商品は市場にでてくることはありません。
このような商品は共有だから問題と税務当局は主張しているわけで、一人で航空機1機、船1隻購入できる本当の大資産家にとっては、逆に安心してできるという形になります。裏で行われることになります。
今回問題となったレバレッジドリース同様、金融商品には「節税」がメリットとされる商品が多いことも確かです。商品の販売者側の説明を信頼して税務処理した結果、何年も後になってから、税務調査により一部の限られた事例にのみ追徴課税されるという自体は、極めて不公平な結末であると思います。こうした自体を避けるためにも、当局側の迅速な情報開示とルール設定が必要と考えますがいかがでしょうか?
ちなみに、税務当局では、金融商品を作る前の架空の取引を前提とした事前の質問には公式には回答しないという方針を示しています。
これについて最近いろいろな動きがありました。
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