(1) 中国の会計制度
中国の会計規則である「企業会計原則」及び「新企業会計準則」は国際財務報告基準(IFRS)に近い内容となっている。
(注)外商投資企業に適用される会計規則は「企業会計原則」(2002年より適用)
中国証券市場に上場する会社は、よりIFRSに準拠した「新企業会計準則」が適用される。(2007年より適用)なお、外商投資企業は任意適用。
(2) 会計監査
外商投資企業は規模の大小にかかわらず、中国注冊会計師(公認会計士)による年度会計監査が強制されている。
会計事務所の監査を受けているため、中国現地法人の決算書は正しいはずだが、ローカル会計事務所の監査をみると・・・
監査業務はぶっつけ本番、棚卸の立ち会いはなし、監査作業日数は1日~2日、監査チームは会計士1名と補助(学生)2~3名、会計事務所内での前年引継ぎ作業は行われていない、いきなり伝票チェック、売上や売上原価の計上漏れ・費用の過大計上となっている決算書でも適正意見、監査報告書の記載金額に誤りがある等々・・・業務水準が低い会計事務所が少なくない。
(3) 会計実務の現状
① 会計処理は発生主義ではなく「発票主義」
現預金の受け払いに関係なく、収益は発票を発行した時点で、費用は発票を入手した時点でそれぞれ認識する。発票 ≒ 領収書・請求書・納品書
A発票発行 B発票発行
商品出庫時 引渡時 相手先検収時 請求時 代金入金時
(発生主義(実現主義)) (現金主義)
② 会計の目的は税務申告のため
会計ルールよりも税務を優先するため、税法基準での会計処理となっている。会計と税務の相違を認めない(別表調整を認めない)税務局担当者もいる。
③ 中国人会計実務者の思考及び業務水準
中国人会計実務者は税務会計の思考が根強く、発生主義会計を理解していない会計員が少なくない。また、中国人会計実務者の多くは帳簿記帳レベル。財務管理(予算編成及び管理、資金繰り管理等)までできる人材は希少。
④ 連携業務が苦手な中国人
中国の現地法人では、発生した取引の事実に基づき適時適切な会計処理が行われていないことがよくある。その原因の多くは、各部門から財務部門に経済取引の情報が適時適切に提供されていない場合がほとんど。
中国人の特徴としてチームプレーや連携業務が苦手であるため、情報が寸断しがち。また、会計担当者も与えられた情報だけで処理すればよいと思っている?
財務部門内のスタッフ同士でも連携がとれていない会社も・・・
⑤ 会計処理基準を設置していない日系企業
中国の会計規則は、国際財務報告基準に近い家計基準であるため、基本的に原則主義ベースの会計基準となっている。
日本やアメリカのような細則主義の会計基準ではないため、会社の状況に応じ会計処理基準の詳細を自ら作成しておく必要があるが、中堅中小企業クラスの日系企業は対応できていないのが現状。
このため、会計員はよるべき会計処理基準がないために、税法基準で会計処理をしてしまうケースが多い。