通常の生命保険にリビングニーズ特約というのが通常付いています。これは被保険者が6ヶ月以内に必ず亡くなるというような状況に陥ったときに、その被保険者の死亡を待たずにリビングニーズ特約により、被保険者が保険金の一定額を受け取ることができるものです。
これにより 生活費や治療費に充てられるというものです。
余命幾ばくもない方には役立ちますね。
約款によると、本来、リビングニーズ特約でその生命保険金相当額を受け取ることができるのは被保険者本人に限定されているのですが、被保険者本人が癌等の告知を受けていない場合や、あるいは重体等で請求できない場合においては、予め定めた配偶者等が請求するという形になっております。
さて、この度相続税の申告を引き受けたのですが、被相続人は平成18年に発病、寝たきり、意識不明となり、リビングニーズ特約により、保険金1000万円を奥様が受領しました。奥様はそのお金に手をつけずにそのまま預金として残っています。平成19年に被相続人の死亡が発生。
奥様がそのお金をもらった(正確には 保険の被保険者であった夫の代理人としてお金を受け取った)時には 税金はかかりません。
問題は、奥様が保管している100万円相当の預金の相続税法上の取り扱いです。このリビングニーズ特約により受け取った保険金1000万円を受け取った時点では所得税は課税されないとされていますが、相続時にそのお金が生活費等に使われず、相続発生時まで受取額が残っている場合、被相続人の現金預金として相続財産に含まれると解釈せざるを得ないようです。
しかし、もしこれをリビングニーズ特約を使わずに相続が発生した時点で1000万円をもらっていたとすると、他に生命保険等がありませんので、生命保険控除の範囲内になり、実質上相続税の課税対象には含まれないことになります。ところが、生前にもらっているので、相続税の課税対象に含まれると解釈されるのです。
理屈では納得できるのですが 何か 今一歩納得できません。
参考---------------------------------
国税庁の見解
リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金
【照会要旨】
リビング・ニーズ特約に基づく保険金(生前給付金)は、非課税所得として取り 扱って差し支えありませんか。
《リビング・ニーズ特約の概要》
1 被保険者の余命が6か月以内と診断された場合に、主契約の死亡保険金の一部 又は全部(上限3,000万円)を生前給付金として支払う。
2 生前給付金を支払ったときは、これと同額の死亡保険金が減額されたものと される(死亡保険金の全部を生前給付金として支払った場合には、主契約は消滅 する。)。
3 生前給付金の受取人は被保険者とし、配偶者等について指定代理請求を認める。
4 特約の保険料は不要である(主契約の保険料に吸収されている。)。
【回答要旨】
非課税所得として取り扱って差し支えありません。
リビング・ニーズ特約による生前給付金は、死亡保険金の前払的な性格を有し ていますが、被保険者の余命が6か月以内と判断されたことを支払事由としてお り、死亡を支払事由とするものではないことからすれば、重度の疾病に基因して 支払われる保険金に該当するものと認められます。
疾病により重度障害の状態になったことなどに基因して支払われる保険金は、 所得税法施行令第30条第1号に掲げる「身体の傷害に基因して支払われる」保険 金に該当するものと取り扱っており(所得税基本通達9-21)、その保険金は非課税 所得となります。
(注) 生前給付金の支払を受けた後にその受取人である被保険者が死亡した場合 には、未使用の生存給付金は本来の相続財産として相続税の課税対象となります (この場合、相続税法第12条第1項第5号《相続税の非課税財産》の規定の適用はな いことに注意してください。)。
【関係法令通達】
所得税法第9条第1項第16号、所得税法施行令第30条、所得税基本通達9-21、相 続税法第12条第1項第5号