平成19年度税制改正大綱を読む
12月は何も書いていませんでした。すいません。目の前の仕事に追われ心に余裕のない生活です。反省して一つだけ自民党の税制改正案大綱を読んだ感想を述べます。
感想です。まだ詳細は分かりません。
自由民主党の税制改正案が発表されました。この内容を見てみますと、羊頭狗肉という言葉がよくあてはまるような内容です。期待させてがっかりさせるという内容です。
主に法人税については軽減措置をしますよという内容だったはずなのですが、実際はそれほどではありません。
それよりも気になるのは「2011年度単年度における基礎的財政収支の黒字化(プライマリーバランス)」という目標が掲げられている。即ち、2011年度には借り換え国債を除き国税支出と国の予算支出等を均衡化させる。即ち国債による収入で国の税収の収入を補わないという形に持ち込むという方針が堅持されています。あと5年後です。そのために平成19年度を目安に「あらゆる世代が幅広く公平に分かち合う観点から消費税を含む税体系の抜本改革を実現させるべく取り組んでいく」という言葉が入っております。これが一番重要なのではないでしょうか。即ち、平成20年度には消費税を大幅に上げたいんだということを訴えかけているように私には見えます。平成20年度から何が始まるかというと、ひとつ思い浮かべるのは、75歳以上の老人の医療保険を新たに後期老齢者医療保険制度として設立する。そのためには相当の税金をつぎ込むということが今年国会で成立した医療制度改革法案の中で決まっています。そして面白いのがその財源が実は曖昧にぼやかされていることです。となれば、老人医療のためにサラリーマンの健康保険料や、消費税を上げようという話になってくるのがこれからの政治テーマになるのではないでしょうか。もちろん来年の参議院選挙が終わった後に出てきそうな感じがします。
さて、平成19年度税制改正の主要項目について見てみましょう。
1.減価償却制度
これは、例えば1億円で買ったものは500万円を除き9500万円までしか償却できない。残りの500万円はその買った固定資産を除却したときにはじめて経費に落とせるというルールになっているものを、二段階で減価償却する形にかえる。100%減価償却できるように変えますよという話なのですが、実はこれには一般の方々が誤解しやすい点があります。
それは今でも100%償却はできます。その物件を除却したり売却したりしたときにできるのです。ただ、単純に所有し利用し続けると95%までしか償却できないという制度です。
それではどういうふうに変わるのか。実は、来年の4月1日以降取得する減価償却については、耐用年数(例えば10年なら10年)で100%減価償却できますよ。
しかし、今既に持っている固定資産や来年の3月31までに買う固定資産については、95%までまず減価償却しなさい。そして更に5年かかって100%まで減価償却をしていいですよということですので、実際はほとんど減価償却は進みません。もともと減価償却が進んでいる物件については大した額ではないのですから。且つ、地方税の方ではこういう機械装置については償却資産税というものがかかりますが、それらについては相変わらず従来通り95%までしか償却できないという形になっています。
従って、話のわりに効果が薄いと言わざるを得ないでしょう。
2.それよりも実際には儲かっている会社に対するメリットとしては、資本金が1億円以下の法人の場合には、留保金課税が廃止されるという制度です。これはかなりメリットがある改正です。ただし、留保金課税がかかる法人の数は相当少ないので考え方としては頷ける話です。なぜ株主が分散していない同族会社であれば、留保金課税制度で本来の法人税課税プラスアルファの税金を払わなければならないかの説明としては、今の税制体系の中では合理的に説明できません。
留保金課税制度が廃止になってよかったとも言えるのですが、これは本来すべきであったという方が正しいのではないかと思います。
特殊支配同族株式の役員給与の一部損金不算入制度については、平成18年4月1日以降に開始する事業年度については800万円以上の所得について課税するのであるが、1年経った平成19年4月1日以降は1600万円以上の法人について課税することになります。難しいことを言っていますが、今非常に大きな不満が税理士会を中心に起きています。それは、事実上主催者法人課税、主催者役員と言いますが、何を主催者役員と言うのか法律からは明確に読みとれないという問題があるのです。これについてはQ&A等で対応することが議論されているとの話です。税務当局が税法上これはこういうふうに読むのだというような意見を出せない(意見を通達といいます)のは異常な事態です。いかにドタバタして特殊支配役員給与の損金不算入制度というものを作ったのかということが疑われます。ややこしいことを言わずに代表取締役の給与所得控除はこれを損金不算入だとしておいた方が税制としてはすっきりしたはずなのですが少しおかしいのではないでしょうか。
取引相場のない種類株式の相続税評価の明確化ということがあります。具体的には、会社法で認められてきた種類株式のうち、配当優先無議決権株式、社債類似株式、拒否権付株式についての評価方法を明確化するというふうに自民党の改正大綱に書かれているのですが、どのように明確化するのかということは実は中小企業庁のホームページに載っています。それによれば難しいことはありません。結局、配当優先無議決権株式、拒否権付株式については普通株として評価しましょう、社債類似株式については社債として評価しましょうということですので、別に相続税が安くなるというわけではありません。ただし、議決権が非常に強い拒否権付株式については1株しか所有していなくても役員人事等を拒否できるというものですのでこれは大変価値があると思うのですが、これも1株として評価する形になりそうです。具体的にどういう形になるかは楽しみなところであります。