保険の話 インシュアランス・カバレッジ
経営者の人が保険に感謝しているという話を聞きました。そこは衣料品を扱っているブティックなのですが、不幸にして水漏れがおき、在庫が雨に濡れてしまい使い物にならなくなったとのこと。その会社にとっては、文字通り致命的な事故だったのですが、その社長は損害保険に加入していたために実質的な損害の約9割が損害保険でカバーされたのでなんとか事業を継続できたと回想していらっしゃいました。
もちろん、おりた保険は基本的には原価(仕入価格)の90%ですから実際にはこのシーズンと思って購入した商品を売ることができないわけですから、商売に大きな打撃を受けたのですが、それでも倒産するよりはましということでよかったとのことです。
どこで何が起こるかわからない時代は損害保険というものは大変役に立つと思います。
損害保険ということで思い出すのは、20年以上前に米国系の会計事務所に勤務していた頃、必ず監査の一環としてインシュアランス・カバレッジチェックという仕事がありました。これは保険にきちんと加入しているかどうかを調査し、経営者の人に保険でカバーされていない部分について注意を促すという業務でした。もちろん、生命保険ではなく損害保険中心の話です。そういう外資系の会社ではインシュアランス・カバレッジについてアドバイスをする会社からのコンサルティングレポートというものを定期的にとることになっていますので、それをもとに経理責任者と話をして報告すればよいというもので、仕事としては簡単なものでした。いちいち損害保険証書を見て、色々コメントするという必要性はありません。今になって考えてみると、その会社の保険の代理店がサービスとしてそのような報告を行っていたのでしょう。
たまたま先程の水漏事故で損害を受けた社長の言葉が気になって適切なインシュアランス・カバレッジというものはどういうものなのか、インターネットで調べてみました。対象は米国公認会計士のホームページです。「次のような分野があります。」という言葉で始まっています。
事業のオーナーは、常にリスクや不確実性に直面している。適切な損害保険でカバーすることにより、それらのリスクを軽減し、従業員や経営者自身を様々な災害から守ることができる。カバーすべき金額や保険の種類は、それぞれの状況によって異なる。そしてサンプルとして保険に加入すべき項目として次のようなことが挙げられていました。
従業員の健康(保険をかけるべき重要な資産である)、これは健康保険のことを言っいるのですが、米国では国の健康保険というよりも民間の健康保険が普通ですから当然重要なわけです。面白かったのは、従業員に適切な健康保険をかけることは価値有る従業員をリクルートしやすくし、離職率を低下させる重要な手段であるという言葉で、いかにも米国らしいなと感じました。
製造物責任保険及び物的損害保険、製造物責任保険は重要です。また、通常の物的な損害保険(火災保険等)も企業の財産を守る意味で必要です。保険の対象や金額は保険料に掛けられるものの価値やそのロケーション並びに財産の種類によって異なってきます。通常、再取得価格での金額の保険をかけることを提案します。棚卸資産、器具、備品、家具、建物等色々な分野が考えられます。ただ、地震や水害など天災による損失は基本的にカバーできません。
事業が中断したときの債務の支払、これは火事やその他の出来事により、事業が中断することがあります。事業中断は、大きな損失をもたらします。それらも保険でカバーすることができます。米国らしいと思ったのは、訴訟による損害保険も必要だとされていました。
そして、最後に生命保険が登場し、あなたの家族を守るためのものであるとされています。
要約として、適切な保険に入ることは事業を成功裏に運営していくのに必要なことである。適切な保険を考え、そして保険に加入し、定期的にそれらを見直していくことは極めて重要である。信頼されるアドバイザーとして公認会計士は適切なアドバイスを行い、経営者の保険を強化する立場にあるとテネシー州公認会計士協会のホームページで紹介されています。には載っていました。
その他にも従業員の事故などによる労災に対する補償のための保険(日本で言えば労災割増保険のことでしょう)の適切な範囲をカバーするようにという条項もありました。また、フィデリティーボンド、要は管理職や一般従業員などの不正行為から生じた損失の保険へのカバーも必要であるということ、或いは、取締役や上級管理職の出張中の事故などへの保険の必要性も謳っている会計士のホームページもあります。
損害保険はできるだけ幅広く完全に入った方が望ましいのは言うまでもありません。しかし、大いに困った問題があります。それは保険料が発生するということです。この損失発生の可能性と保険料のバランスをどうやって考えるか、なかなか難しい問題です。