会計監査の業務はますます拡大しています。
近い将来、5年後くらいには公認会計士の合格者を現在よりも倍くらいに増やしたいというのが国の方針です。公認会計士による会計監査の機能が有益であるということが分かってきたのか、監査を法的に要求する方向が決まっています。公認会計士による会計監査という機能を広げることは、国の制度上必要になっています。
上場会社の監査はますます厳しさを増していますし、更には内部統制の監査というものも2年後に始まる予定です。
学校法人、あるいは財団法人等においても監査が要求されていますし、病院等にも監査が機能評価の条件として大病院においては要求されることになっていっています。社会福祉法人の監査など公益法人においても、ますます監査の要求が強まっています。
問題が2つあります。1つは公認会計士にとってリスクが高い割に監査が必ずしも採算がよくなくという問題、もう1つは公認会計士が行っている業務と監査とが両立しないという問題です。
公認会計士試験に合格しますと、通常は監査法人に所属します。そこで一定期間実務経験を積んだ後に公認会計士としての認定を受け、公認会計士として活躍していくというのが現在のルールです。
そのような形になりますと、監査法人、既に数千人規模の大きな組織になっていますが、監査法人に所属して、当初はいわばサラリーマン的な立場で監査業務やコンサルティング業務、税務業務を行っていくということが肌に合った人は監査法人にずっと勤めれば将来的には代表社員という共同経営者になっていくというキャリアのパターンがひとつあります。
会計士の試験は確かに難しいのですが、一般に想像されるよりも給与水準は低いとされています。 会計士は侍商売だからお金の話はするな、監査より これこれの業務の法が儲かると言うこと自体よくないという風潮もあります。日本だけでなく米国でも同じ話があります。
最終的に公認会計士になった後も、通常は最低数年間は監査法人に勤務するのですが、どこかの時点で監査法人と袂を分かち、別の道へ進むこともあります。
私などのように個人の会計士事務所を開くということも一つの有力な進路です。個人で会計事務所を開く場合には、上場会社の監査は監査法人が望ましいという証券会社等の対応もあることですから基本的には上場会社の監査の仕事は個人の会計事務所はやりません。ただ、学校法人等の監査の仕事をやるケースがあります。
ところが、監査法人を辞めて自分の事務所を開く場合、私の場合は監査そのものに魅力を感じなくなったというか、直接経営者の役に立つことをやりたいという意欲が増してきて監査法人を辞めましたし、同じようなケースも多いようです。
つまり、監査というものは一つの社会的機能であります。上場会社というか証券市場を守るためには監査という仕事が必要である。証券市場を守る一つの重要な灯台が会計士監査であり、公認会計士の監査は灯台守と同じように日はなかなか当たらないがないと困るという社会の重要な構成要素を果たしているということは十二分に理解し、その公認会計士という道を選んだはずなのですが、やがてその中でもっと直接お客様の顔が見える仕事がしたい、お客様の役に立っているという実感が欲しいという気持ちが出てくるとどうしても私のように別の道を歩む人たちも増えてきます。
監査法人で研鑽しないと会計士になれませんので 言葉は悪いかもしれませんが若いやる気のある兵隊がたくさんいるというのが監査法人の人的な側面です。
故に上場会社については、監査法人が監査というサービスを提供しているので問題はないのですが、問題は学校法人、公益法人などに対する監査の要望です。
即ち、公益法人や病院機能評価で要求される病院の監査などについては税務や経営コンサルティング、会計指導を行っている会計事務所の公認会計士はこのような公益法人や病院等の会計監査を行うことは出来ないとされています。
即ち、監査というものは第三者の立場に立ってその経理の数値が正しく病院や学校法人等の数値を示しているかどうかについて意見を言うということが業務ですから、その数字を会社の経営者と共同して作成している立場に立つ公認会計士はそのような監査業務は提供できないというルールになっています。
そうすると、経営者にとっては監査の役割というのはいわば公的なお墨付きとしてそれらの病院等が作成している決算書が正しいということを証明してくれる機能ということになります。
会計事務所を選ぶときは アドバイスを求めて会計事務所を選ぶときは、例えばみなさんが考えていらっしゃるのと同じようにA会計事務所とB会計事務所のどちらが自分に役立つアドバイスをしてくれるかということによってAを選ぶケースもあるでしょう。Aの報酬が高くてももらえるアドバイスがいいからAを選ぶということもあります。
ところが、監査の場合には正しいかどうかですから、むしろ正しくないと困るわけですので正しいという証明書をもらうということが重要な条件になります。とすれば、AかBのどちらの監査を受けるかは本質的にはそれほど大きな影響はありません。メリットは変わりません。それならば報酬もそれに相応したものしか得られないことになります。
もっとわかりやすい言葉で言えば、公認会計士が一日仕事をしていくらという報酬体系になるわけです。もちろん、公認会計士が何日仕事をしなければいけないかということになればその会社の状況によって状況は変わりますのでなんとも言えないのですが、公認会計士が自分で仕事を一日していくらということは一緒ですから年間250日くらいしか働けない公認会計士にとっては基本的に一日いくらという形になります。そうすると、社会的機能としての監査の重要性は重要なのですが、どうしても報酬は一定の水準に落ち着く形になりますし、また直接会社に働きかけ、会社の役に立つということはなかなか目に見えない形になります。
公認会計士をどんどん増やそう、そうすれば監査業務をやってくれるはずだということは一面では正しいのですが、さて本当にうまく機能するのでしょうか。例えば、上場会社の監査を中心に行っている監査法人は現在のところあまり採算の悪い監査の仕事は引き受けない。採算が悪いということは、即ち公認会計士一人が仕事をしてもらえる報酬が安いところは引き受けない、あるいは将来訴訟問題等に巻き込まれそうな監査の仕事は引き受けないというふうな流れになってきています。
さて、どのような流れになるのでしょうか。