優良企業は会社法の改正による決算書の注記を充実させた方がよいようです。
会社法が改正され、決算書に個別注記表という形で注記の充実が求められています。
ところが、この注記内容そのものはそれまでの中小企業が依るべき会計基準で要求されたものよりもかなり省略されたものになっています。資本金1億円以下の会社にとっては、重要な会計方針や発行済株式総数など極めて限られたものしか注記としては要求されていません。
先日の名古屋の研修会で、東京のあるベテラン会計士の方が面白いことを仰っていました。
「注記表は会社法で要求されているものよりももっと充実させるべきである。なぜなら金融機関は決算書を見ることによってその決算書を作成している会計事務所の実力をはかることができる。」
会社法では要求されていなくても決算書に入れてほしいと金融機関が思っているデータとしては次のようなものがあるのではないか。
①繰延税金資産
繰延税金資産については、単に表示するのみならず、資産性があるという説明をきちんと注記で示すべきである。
②リースについての記載
特にファイナンスリースの年間支払額や契約残高については是非記載すべきである。なぜなら今リースについては、これを資産化(リース会社からの借入金として処理すること)を求めるよう世界の会計ルールがなっており、日本の税務当局もそういう検討をし始めるようになった。
逆に言えば、金融機関にとってはリース会社からの借入(リース)から銀行貸付へ転換するときの参考資料にもなるし、実際の決算書もファイナンスリースの考え方を取り入れた会計でなければ事実的には意味がない形になってきているからである。
③時価会計が要求されているのは中小企業ではほとんどない。しかし、所有している有価証券等については時価の注記をすべきではないのであろうか。
また、不動産等の減損会計は非常に限定的な場合(遊休資産など)のみしか要求されてはいないが、何らかの形で注記事項として表示べきではないか。
即ち、自主的な参考資料であるから時価が○○で○○の含み益がある、あるいは時価が下がっていて○○の含み損を抱えている、などは金融機関にとっては有用な情報であろう。
なかなか興味深い意見だと思いました。特に、優良企業にとっては自分のところがこんなに優良だよとアピールするために決算書の注記事項を活用して含み益の存在などをアピールすることができるのではないかと思います。
なぜなら決算書そのものは優良企業であればできるだけ節税になるように作る。即ち、含み益が表に出ないように作る方が節税になります。しかし、注記であればそれは利益となる、即ち、税金の増額になるのではなく単なる情報ですので、そのあたりでも活用する余地があるのではないかと思います。