相続税の税務調査の話です。
相続税の税務調査がある場合、まず会計事務所に連絡が来て、その後 会計事務所から相続人に連絡します。私どもと遺族の方と税務署との間で日程を調整し調査の日を決めます。
遺族の方々は、相続税の税務調査と聞くと大変心配されます。今まで税務署とは直接関係のある方々ではないのでご心配されるのももっともです。
しかし、私どもでもそれなりに調べて相続税の申告をしておりますので、それほど税務調査でびっくりするようなことが出てくることは預金がらみをのぞいてはありません。しかし、預金関係は頻繁に税務調査で問題になります。
ほとんどのケースは現預金の所有権の話です。つまり預金の話で言えば、亡くなられた方名義の預金は当然相続税申告をしているのですが、亡くなられた方のお子様やご家族の方の預金について、これが本当は奥様やお子様やお孫さんの預金なのか、それとも亡くなられた方が彼らの名義を借りて預金していたものなのか、即ち後者の方であればそれは名義は奥様やお子様やお孫さんかもしれませんがその中身は亡くなられた方の財産ということですので相続税の課税対象になります。
もうひとつは、どこかにお金が隠してあるのではないかということです。
これは名義預金とも関係するのですが、税務署はどのような調査をしているのでしょうか。噂によれば、税務署には過去に不動産を売ったり、あるいは高額所得者について将来の相続税の税務調査に備えて資料が準備されているとのことです。
そして、相続税の申告があった場合、それらの資料や過去の所得税の申告状況を元に勘案して預金や金融資産が少なすぎないかどうかを考え税務調査の重点対象を選ぶとのことであります。
税務調査で必ず遺族に聞かれることは次のようなことです。
・ 亡くなられた方はどういう仕事をされていたか。
・ いつ頃から病気になられたか。
・ 入院はどこでどのくらいされていたのか。
・ お金の管理は誰がしていたか。
入院生活が長い場合、お金の管理はお子様方など相続人がしている場合が多い。急にお亡くなりになった場合は別にして、何年も闘病生活を送られた後に亡くなられたり、寝たきりになられた方が亡くなられたケースでは、お金の使い道は逆に言えばご家族の方が管理されている場合が多い。その場合、お金はどう使われていたかということについての追求は「知らない」とはなかなか言えないものです。
過去の例で言えば、お金の管理はしっかりご本人さんがされていたのですが、何に使ったのかよくわからないケースももちろんありました。
生活費と比べてみれば金額が多い。一体何に使ったかご家族の方も知らないというケースです。税務当局もそれ以上は調べようもありませんので宙に浮いたケースもあります。
しかし、大抵の場合は税務当局は優秀ですので、家族名義に変わっているものやどこかに隠し預金になっていたり、お子様方に流れているケースなどよく見つけだすなと感心するくらいよく調べだします。
税務当局は金融機関に行き預金の動き等をマイクロフィルム等から探しているとのことであります。また、最近はキャッシュカードでの出入れの記録がありますので、必ずしも証拠にはならないのですが、昔ながらの手書き伝票(預金引出伝票や送金伝票)を書いている場合にはその筆跡から本人なのかそれ以外の人なのか、誰が銀行に行って送金したのか引出したのかなどを調べて追求されたこともあります。
また、お子様方の説明により、税務署が納得して帰ったケースもあります。要は、お金が隠してあるのではなく、他のことに使われた場合に税務署がそうだろうなと納得したケースです。
例えば、高額な漢方薬を買っておられたり、親戚等の生活支援を永年続けておられたり、などのケースです。
私どもも相続税の申告書を作成する前に遺族の方にある程度事情を伺いますが、遺族の方々からお話いただけないケースでは、洩れてしまうことが多いものです。あるいは、遺族の方であっても、ある遺族の方は知っていても他の遺族の方は贈与の事実を知らないケースもありますのでなかなか情報が集まらず洩れることもあります。
このような税務調査を立ち会っていて感じることは、よく相続税については調べているなということを改めて感じます。