辻・本郷会計事務所の本郷孔洋先生のブログに『大学病院が倒産する日/照屋純著(はる書房)』という本が紹介されていました。
http://www.ht-tax.or.jp/hongo/archives/001991.html
本郷先生のページより引用
本著によりますと買収で大きくなった病院ビジネスが破綻した経験を基に、その倒産の原因は次の4つだと書いていました。
①、 優秀な医師が、マネージャーと会わなくて、やめたこと
②、 ターゲットとした、高度医療を必要とする患者さんが思ったほど集まらなかったこと
③、 医療保険の支払いが予定に達しなかったこと(アメリカでは、保険会社に請求するのだが、平均して請求額の半分しか払われないといいます。ところが、レセプトがしっかりしていないと、請求額の20%ぐらいしか支払われないと書いていました。又、アメリカでは入院患者は一律定額支払いなので、不必要な検査や投薬はそれだけ赤字を膨らます要因になる)
④、 医科大学を買収したこと。(医科大学は買収すると経営的に大変なようで、かえって病院だけの買収の方再建が早い。)
事務方が権力を持つ
アメリカの病院は、本著によれば、事務と、医師が全く対等関係と書いていました。そのため、結構対立するようで、優秀な医師がやめたりするそうで、経営や、運営に支障をきたすらしい。私流に解釈しますと、アホな事務方では、病院経営ができないということでしょうか?これも、今後の日本の医療を考えると参考になりました。
おもしろそうと思い 私も早速これを買って読んでみました。
印象に残った言葉を挙げてみると次のとおりです。
・ わずか数人の最高幹部の失敗、見通しの甘さ、そして怠慢などによって、このような巨大な組織でもいとも簡単に崩れてしまうものだということを感じないわけにはいかなかった。
・ 私は、アメリカ医療の強みと弱みの両方を見ることができる。強みとは、経営感覚のない医師の意見に左右されず、事務部門が最終的にお金を動かすことができることである。他方、弱みとは、医療と医療の質をあまり知らない事務部門によって病院の経営がなされ、収益を追うことにのみ一生懸命になって、医療の質が低下していくことである。この両社のバランスをとるのは、一般的に言って非常に難しい。
・ 給料はそれほど悪くなくても、仕事の満足度が低ければほどんどの人は違う職を探すであろう。そのために多くの良い医師がノースウェスタン大学病院を去っていった。
本の内容そのものは大学病院の倒産に焦点を当てているというよりも日本人医師が米国に移住し医師として活躍する中で倒産した大学病院、医療よりも経営重視の経営、事務方が強い大学病院での経験、そして現在の経営と医療のバランスがとれている病院での経験を中心にアメリカの医療制度がわかりやすく説明されている本です。
アメリカではこうなっているのかと思うようなところが色々ありました。アメリカで起こったことは何年後かに日本にやってくるというのが大体の予想ですので参考になる本でした。