会計参与とは、5月から施行される会社法で導入された制度のひとつです。
会社が決算書を作るのですが、そのときに会計士・税理士を会計参与という名称の役職に任命し、決算書を会社と共同で作らせることができます。会計参与は、任意の制度です。強制的な制度ではありません。
会計参与が関与した決算が間違っていた場合には、その決算を信じた人は会社や会社の取締役に損害賠償が請求できることはもちろん、共同で作ったとされる会計参与に対しても損害賠償が請求できる。従って、会計参与がいる会社の決算書は、会計参与がいない会社の決算書よりも信用できるというメリットがありますよという話です。
ところで、この制度は会計士会と税理士会が共同で提案したとのことです。会計士会・税理士会のねらいはわかりますよね。今まで新しい職場として取締役と並べるような立場での会計参与という役職を会社に作りましょう。そうすれば会計参与に就任できるのは会計士や税理士に限られていますからその分報酬がもらえる。会計士や税理士にとっては新しい収益源になりますという話です。税務署もOBを斡旋しやすくなります。
また、未上場会社の決算書は信用できないというのが金融機関の一般的な常識ですが、金融機関は会計参与がいる会社の粉飾された決算書であれば会計参与に損害賠償を請求できますので(取締役にも損害賠償を請求できますが、取締役は会社の経営者そのものですから会社が破綻したときには取締役も破綻しているケースが大部分である)信頼性が高いということになります。
結果として、会計参与になることは相当な責任を負いますので当然ながら相当な仕事をし、それなりの報酬をもらわなければ会計参与になることはないだろう、従って会計参与になる資格を有している会計士や税理士の団体である会計士協会や税理士会がそのように望むならそのように会社法を改めましょう、ただし、実際に会計参与をわざわざお金を払ってまでお願いするかどうかはわかりませんからね、という冷ややかな態度で会計参与の導入が決まったと言われています。
私は、会計参与などは金融機関にとっては嬉しいでしょうが、実際に引き受ける側からすれば、業績の良い会社であれば会計参与は安心して引き受けられる、しかし、業績の良い会社は会計参与に払う報酬の分だけ実質的には金利が上がることになる。そのような業績の良い会社に対して今どき貸出し競争をしているような金融機関は果たして会計参与を付けてくれと言うのだろうかと疑問を抱いています。
また、逆に業績の悪い会社については金融機関としては融資を少しは安心してできるように(本当は貸さないかもしれないが)ぜひ会計参与をつけてくれるように会社に要求する。しかし今度は粉飾決算の恐れがあるような業績の芳しくない会社であれば金融機関は会計参与を望むでしょうが、引き受ける会計参与の側になる会計士・税理士の側では引き受けないか、もしくは相当の報酬をもらって引き受け、且つ厳格な調査を行う、つまり赤字決算、大幅な債務超過の正しい決算書を作る。従って、会社と会計参与の利害が真正面から対立するという流れになろうかと思います。
そうなれば実際上は会計参与というものは機能しないのではないのだろうかというのが私の意見でした。