7月2日に商法改正(会社法)が国会を通過すると言ったばかりですが、6月29日に参議院を通過しました。
今までの会社法を理解していないと今回の新会社法は理解できない話になると思います。
今回の会社法の一番の特色は、各会社が色々な制度を自由に選べるというように変わったことです。具体的にお客様の会社がどのような形の組織形態をとればよいかについては後日まとめて小冊子を作成し配布させていただきたいと思っています。
それとはまた別に新しい動きとしては、今度の会社法の改正をきっかけに会計参与というものが導入されました。これは今までの日本企業にとって初めての試みです。つまり、第三者(公認会計士、税理士、監査法人、税理士法人)に委託して会社の決算書を会社と共同して作ってもらう、且つ、その決算書を公表する。こういう役割の形とは、取締役、監査役と同様の地位として会計参与という地位を会社法の中で与えられます。会計参与は取締役と同じように第三者の株主代表訴訟の対象になります。これは今までの歴史の中で初めての画期的なことです。 つまり、今まで第三者が会社の決算書が正しいということを証明していたのは、上場する会社が監査法人に依頼して会社の決算書の監査を受けていました。これは、上場するという大きなメリットを与えられる代わりにその財務内容等(監査法人の監査を受けて正確性を保証してもらう)を公表するという制度でした。会社は、監査法人にお金を払って会社の財務内容を証明してもらい公表するという制度でした。そこには上場というメリットがあったのです。
ところが、会計参与制度は、会社がその会計参与の制度を利用してもしなくてもよい。しかし、会計参与制度を利用すれば当然ながら会計事務所等は株主代表訴訟の対象になるわけですから慎重に決算書を作るでしょう。つまり、会計監査を受けるのと同じ効果がもたらされるし、且つ、それにより損害を被った方々は株主による取締役代表制度と同じように会計参与を訴えることができるという制度です。
つまり、会社が自ら会計参与に対してお金を払い、上場していない会社の決算書の数字の正確性を証明してもらうという非常に画期的な制度です。ただし、その会計参与の制度は商法学者の間からは冷たく鼻であしらわれているというのが実情です。おそらくそのようなことをするところはないであろう。メリットがないからということですが。やましいことがない会社ならばただ決算書を公表すればよい。わざわざ会計参与にお金を払ってまでどんなメリットがあるのだという考えです。実際はどうなるのかそれはわかりません。
いずれにしてもそのような中小企業の会計について今までのところ税法以外に規定らしい規定がなかったために中小企業の決算は極めて不正確と言われていました。今回、この会計参与の導入を受けて、日本で統一した中小企業会計の基準が決まりました。その基準は、手続き的には若干緩められているとはいえ(正確性の程度においては簡略な手続きを用いるということになっています)、次のような上場会社に用いられているルールと基本的には全く同じルールが用いられることになっています。即ち、銀行等で問題になった国に税金を先払いしているという繰り延べ税金資産(税効果会計)、退職金の不足額を示す退職給付引当金、並びに上場有価証券等についての時価会計の導入、そして上場会社でも来年度から正式に導入される減損会計、これらを全て中小企業会計として用いることになります。
従って、会計参与がついている決算書はこれらのルールに従った貸借対照表、損益計算書を作成しないとそれはそのまま株主等を騙したことになりますので株主代表訴訟の対象となるというわけです。これらのことはますます会計についての制度が厳密化されてきますし、また、そのようなルールに従っていない会計参与を置く会社というものが果たして存在するのかどうか疑問だと私は思っています。