つい先日、土地の公示価格が発表になりました。
私の住んでいる福岡市の公示価格を見るとごく何ヶ所かが若干の上昇、横ばいが何ヶ所か、そしてほとんどの土地は相変わらず年々下落していきます。そして、商業地よりも住宅地の方が下落率が大きい。新聞の一部は福岡市内の一部の土地(中心的な商業地)が上昇に転じたのを受けて、土地の低下には歯止めがかかったというような文章が載っています。
そのような時、「土地の価格はこう決まる」(井上明義著/朝日選書)を読みました。この方は、「三友システムアプレイザル」という革新的な不動産鑑定事務所を設立し、二十数年現役として活躍されてきた方です。バブルの最盛期に地価が現在の半分になると予言されたことで知られているそうです(私は残念ながら聞いたことはなかったのですが・・・)。この方が、また現在もこれから5年後に更に地価が半分になるということをこの本の中で主張しています。
その主たる理由は次のとおりです。東京の都心部の地価の値上がりは海外ブランド店舗の出店需要による値上がりと都市基盤整備による値上がりの2つによるものである。いわゆる土地の供給に比べ需要が多いため地価が上昇しているわけではないと言っています。
東京では、大型再開発による大型一流ビルや基盤整備(地下鉄 公共設備など)による価値の上昇による地価の上昇が強い。逆に言えば、このような投資がなされなければ地価の下落には歯止めがなかったと思われる。さらに、大型再開発により再開発された高級ビルに他のビルに入っていたテナントが移転している。オフィスや店舗賃貸需要が強いから家賃が上がるのではない。
この結果、他のビル、旧来のビルは空室がなかなか埋まらない。結果としてそのビルの収益性が下がる。ということは、結論だけいえば、今流行りの収益還元法で言えば大型再開発ビルは収益的に上がるが、旧来のビルは家賃の低下に伴い収益性が落ちるため旧来周辺の地価は下落の一途をたどっていると述べている。このような玉突き現象が、大型ビル、中型ビル、更には不便な場所にあるペンシルビルというふうに玉突きで動いていると述べている。結果として、特定の再開発地域のように土地が上がる場所が点のように存在し、面の世界では土地の値段は下がるというのである。また、高級高層マンションでは需要以上に大きな購入供給圧力があるとされている。従って、マンションの過剰供給はその供給するためのマンション用地の地価の値上がりをもたらし、逆に過剰供給によるためにマンションの投げ売りが始まり、値下がりが始まるとされている。当人の言葉によれば平成17年から再び不動産不況が始まる。とすれば、高額マンションの破綻が原因だろう。それは都心3区から起こり都内の周辺地区、ついで大阪、名古屋、福岡に波及するのではないか。結果的に地価は5年後には現在の半分に下がるという主張であった。ビルを建てれば建てるだけ供給が増えるわけであるから(人は土地に済むのではなく建物に住み、事務所などは建物の中に構えられる)賃料が安くなり、地価が下がるのだという論法だ。
住宅 店舗 事務所の需要は増えているのであろうか?
私としては、これから土地が上がるという解説よりこれから土地が下がるという解説の方が論理的に思いました。また、国民も土地の値上がりを期待する人よりも値下がりを期待する人が多いという統計結果も公表されており、なぜなら土地の所有者は固定資産税が上がることを嫌がるからだそうであります。結局、地価の値下がりで困るのは誰かというと、その土地を担保に金を貸している金融機関であるとされています。せっかく金融機関の不良債権が減少し、金融不安がかなり落ち着いてきたと考えていましたが、この方の論法によれば、再度金融資産の不良債権が発生し金融不安の恐れがあることになります。
なるほど、と思う気持ちです。
恥ずかしながら 平成2年の冬 土地の値段はこれから下がるだろうとは思いましたが せいぜい 2-3割としか思っておらずこんなに下がり、かつ金融機関の経営の根幹にまで影響が及ぶとは思っていませんでした。
私には将来が読めません。今は 上がる可能性よりも下がる可能性が多いのかな、下がった時にどんな影響をもたらすのかなということを思っているだけです。