今日本では、所得が低い層は特権階級であり当然に国から助けてもらえるのだ、という状況になっているのが実情のようです。
高齢者は自分の子供や孫にどんなに将来に追加の増税、子供・孫世代の年金の減少という重荷を背負わせてでも、高齢者世帯を助けるべきだ、それが正しい政策だという政治風景になっています。
この為、消費税の導入が行われた平成元年や平成9年の時と違い、低所得者への配慮ということが改正税法にうたわれています。逆進性の問題だといっています。
私が考える逆進性とは、所得が低いほど負担が大きいということなのですが、百円の物を買ってかかってくる消費税は所得の高い人も低い人も同じ消費税がかかってくるわけで、所得の高い人は例えば5%の消費税で済むが、所得の低い人は10%の消費税がかかるという累進税率の逆ではありません。単純に平等な税率ですので、こちらの方がよほど良いとは思っていますが、ひたすら逆進性があるということをどの政党も訴えています。
ちなみに、税法改正案の附則のところでは低所得者への配慮の為、逆進性の緩和を行う為、給付つき税額控除や複数税率の検討等を行うとしています。
複数税率とは、例えば食料品については安い税率を使うということです。これは付加価値税の発達しているヨーロッパでいくつか導入されている話を真似ようという話ですが、実際にはヨーロッパでは大変な混乱をもたらしています。
日本の税制のルールは厳格に適応されますので、もし複数税率になると、大変な混乱と企業の側に大きな事務上の手間暇がかかるということになります。笑い話のような話ですが、実際には気が遠くなるほど難しいし、きつい税法になると思います。
例えばフランスでは、農産物を保護するためマーガリンよりバターの方が軽減税率ですし、キャビアは標準税率ですが、フォアグラとトリュフは農家を保護するために軽減税率とか非常に細かいことをやっています。またチョコレートも、食品につかえますから軽減税率、ところが星型のものは標準税率という形になっています。
いわゆる一昔前の消費税が導入される前の物品税(桐ダンスは某政治家の地元の特産品だから税率が低い、通常のタンスは高い)等の世界に戻るわけです。政治家にとっては、自らの活躍する場所を得るために是非複数税率を導入したいのかもしれません。
そのように複雑な税率になりますと、結局正確な帳簿を付けないと一番高い税率が課税されることになります。
従ってパソコン会計が絶対必要になる。取引を1件1件正確に仕訳入力する必要が生じます。
当初、消費税が導入されたときは、実際に消費税を預かり国に納める事業者が簡単に納められるような制度にされました。そして簡単な制度にするということは、逆にいうと国が取るべき消費税が事業者の手元に残る(益税問題)という話になるわけですので、色々と工夫しながら益税を減らす制度にかえ、逆に言えば事務負担を増加させながら消費税の税収を増やしてきました。
一方、パソコンの高度化やパソコン会計の発達もあり、単純に消費税率が一律5%から8%に上がるだけでは特にパソコン会計ソフトを買い換える必要はないと思われます。
ところが「低所得者」への配慮のため複数税率等になりますと、非常に複雑になりパソコン会計ソフトを新しく買換えなければならなくなります。
「商売とは同じ商品を何回も繰り返して買ってもらうことだ」という言葉がありますが、個人のマイホーム等と同様にパソコン会計ソフトやパソコンの業界はなかなか買い換え需要が起きません。
上はマイクロソフトから下はパソコンメーカーまで一貫してやってきたのは時々ソフトをバージョンアップするということです。マイクロソフトの基本ソフト(OS)は、以前はVISTA 、今はwindows7ですが、もうすぐwindows8にバージョンアップします。
そして、windows8になると、もうすぐwindows7はメンテンスをしていくがひと世代前のVISTAはメンテンンスしないということになります。
パソコン会計ソフトの業界も毎年少しずつ改良しています。その改良ソフトをもらうためには保守料を払いなさいということをしています。保守料は当然ながらソフトそのものよりは安い。
たとえば弥生会計のソフトは7万円、保守料は年間3万円です。それでも保守契約をする人は少ない。基本的に会計ソフトは改良がなくても困りません。
最新のパソコン会計ソフトは、最新のパソコン(現在ですと、マイクロソフトのwindows7)対応版しか販売していません。基本的に大きな改正が無い今の段階では、古いソフトをそのまま古いパソコンが壊れない限り使い続けることができるわけです。
windows8で会計ソフトも買いなおさなければならないとなった場合には、パソコンそのものを新しく買いなおさなければならない。
単純に言えば、新しいパソコンでは、古い会計ソフトは完全には動かない。新しい会計ソフトは、古いパソコンでは動かない。マイクロソフトが基本ソフトをバージョンアップすることにより、マイクロソフトも、パソコンメーカーも、会計ソフトメーカーもいずれもユーザーに新しいソフトやパソコンを買うように強制してきたわけです。
一方、会計ソフトそのものは、古いものをそのまま使い続けてもパソコンが壊れない限り困らない。しかし、複数税率など複雑な税法になると新しい会計ソフトでなければ困ります。そのためには新しい会計ソフトだけではなくパソコンも買いなおさなければならない。会計ソフトだけではなく、購買ソフト、販売ソフトも同様です。
さらにはレジ(複数税率になった場合にはどのくらい複雑なレジになるのか想像がつきません)や値段の改定方法など色々な問題が生じ、レジの買い換え需要の期待というものがあります。