前回の続き 名古屋の研究大会で参加した部会
「新・信託法を活用した事業承継対策について~跡継ぎ遺贈型受益者連続信託を中心として」というテーマの研究発表に参加しました。
平成19年9月末から信託法が改正施行されています。それに応じて法人税法も平成19年度税制改正において対応処置がとられています。従って、いまごろ、どういうテーマだろうかと思って行ってみました。
「跡継ぎ遺贈型受益者連続信託 」言葉は難しいのですが、要はこういう話です。
会社の社長がいます。社長には奥さんはいるが、子供はいません。会社の創業に尽くしてくれた弟がいます。この場合に、社長が亡くなったときに、弟と奥さんに財産を分けるときの社長の希望は、財産の相当部分を奥さんにあげたい。しかし、ここで次の問題が生じます。奥さんが亡くなったときの相続は、奥さんの兄弟や姪っ子にはいきますが、社長の弟など社長側にはいきません。従って、自分が築いた財産は奥さんのときには奥さんでいいのだが、奥さんが亡くなったときには自分の血族、弟に渡したい。
しかし、これは、従来の判例等では信託でできなかったとのことですが、信託法を改正してできるようにしたという話です。
この事例は信託法が改正されたときの研修会やその後の税法改正の研修会などで聞いた話だったので新鮮味はなかったのですが、弁護士さん達の発表を聞いていると、要は遺留分請求権をどこで行使するのかというのが大変問題になっているとの話でした。
結局、信託法をつくった人と民法の相続関係をつくっている人とが打ち合わせをきちんとしていないのだなと単純に感じました。
そういえば、今話題の、企業オーナーが会社の株を相続するときに相続税法上80%延納を認めようというために中小企業庁が中心になってつくった法律がありますが、その法律は今年の10月1日から実施です。しかし、遺留分に関する事項は打ち合わせが十分なされていなかったのか、来年の3月1日から実施とのことです。法律の世界でも縦割行政のせいか、十分調整されていないなというふうに感じました。
信託のことについての話では、実務上の話が出ませんでした。連続信託を用いる場合の信託手数料はどれくらいかかるのかというところの話です。信託も奥さんの相続など30年間にまたがるそうですので信託報酬に大きな関心を持ちます。
また、遺留分についてそういう議論が行われているということはわかったのですが、実際にはどうやって行うのか、どういう計算で遺留分を計算すべきだと発表された弁護士さんは考えているのか。これがわかりません。
確定的な定説はないということまではわかりますが 発表者の自分の意見ではこうだ。依頼人がきたらこのようにアドバイスするとの話はありませんでした。
あれがわかりません、これが議論が分かれていますだけでは、人にアドバイスできないと思うのですが。