平成19年税法改正 再確認
Ⅲ.特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の金額の見直し
本質は違うところにある。
平成18年4月1日以降開始する事業年度から導入されたものに特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度(税法用語で難しくてすみません)という制度があります。
単純に言えば、社長一族が90%超株式を所有している会社の社長の給与の一部を交際費と同じように会社の経費には入れませんよという制度です。
これについては、社長の給与プラス会社の利益が800万円を超えている場合はこの基準が適用されることになっています。仮に、社長の給与が1000万円、会社の利益が200万円というような会社ですと、昨年導入されたルールでは社長の給与のうち220万円が交際費と同じように会社の経費にはならず、その分税金が増えるという制度でした。
これが1年で800万円という基準が変わり、平成19年4月1日以降開始する事業年度から課税所得プラス社長給与の合計が1600万円以下の会社は免除ということになります。
なぜ導入されてすぐ1年で変わったのか。理由は簡単です。実はこの制度を国会に通す時に財務省はこの制度が適用されるのは約5万6千社であると自民党に説明していました。ところが、税理士会等で試算したところ、約65万社がこの適用になる。つまり、日本の会社は大部分が中小企業ですから3分の1程度が適用になる。しかも適用になった会社は極めて影響が大きい。なにしろ中小企業の役員報酬の平均が約600万円といわれています。ということは、ちょっと利益を出している企業は当然800万円くらいの給与をとるわけですから、大変大きな問題になります。
当然ながら今年の中小企業の団体では、税法改正の運動をしています(東京税理士会の政治連盟も廃止運動をしています)。そして今年7月に参議院選挙がある。税制の抜本改革(要は消費税を始め色々な増税をすること)は、参議院選挙に負ければまたやり直しになりますので、何が何でも反対が強いものはやめようというのが平成19年度税制改正の流れだったそうですので、とりあえずこんな形に変わりました。
実はこのあたりは大した改正ではありません。非常に儲かっている会社については従来通りなわけで、社長の給与の一部が経費にならないという制度になっているのですから問題だとされています。
しかし、実は本質的なところで変わりました。なぜならば、この特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度には除外規定が色々とあります。そのひとつ、株式の10%超を第三者が持っている場合には免除される。では、その第三者とはどういう人たちなのであろうかということについて、ルールが曖昧だったのです。従業員持株会はどうなるのか、取引先はどうかということが曖昧だったのです。法律は昨年の4月から施行されていますが、これについて国は見解を一切公表していませんでした。なぜなら、見解を公表すればそれを利用して当然ながら節税(?)に走る人が出てくるからです。ところが、参議院選挙があり、ようやく渋々基準を発表しました。基本は簡単です。第三者であればいい。そういうわけで、かなりの対策が安心してうてることになります。こちらのメリットの方がよっぽど大きいというのが私の実感です。
ただし、法律の施行時期の関係でどうしても1年間は従来の800万円基準になります(1600万円基準に変わるのは来年の3月決算からです)ので中小企業にとってはかなり頭の痛い問題になりそうです。