税金の問題について思うことは、最近国債が700兆円を超えて発行されている。従って、国債の返済ができず、日本の財政が破綻する。その対応策として預金封鎖が行われるのではないかとか、大幅な増税が行われるのではないかとかいう話がそれまで税金に関心を持っていなかった人々から聞かれるようになったことです。雑誌でもよく特集で取り上げられています。(参考:週刊エコノミスト平成17年10月17日号)
ここで思うのは、財務省による宣伝が十二分に行き届いているなということです。つまり、日本には大幅な赤字がある。大幅な借金もある。なんとかしなければならない。そのためには増税かつ消費税の引き上げが必要だという宣伝というか情報が十分に広まっているということを意識します。本当にそうなのかどうかということは議論の対象ではありません。そのような形になっている。そのようにみんなが信じているということが問題なのです。
また、その雑誌には節税策も載っていました。サラリーマンの副業については、妻がやった形にして奥さんが税金を払う。ご存知のように日本の税金は累進税率ですから高い給料をもらっている夫が副業の収入をプラスすると税金が高くなる。それよりももともと所得のない奥さんが収入があるという形にすれば大した税金はかからないというやり方です。など、様々な話が載っています。
更には、米国での中古不動産投資の節税策についてその節税方法そのものがLPSという日本にはない法律形式を用いた投資であったことを理由としてLPSへの投資は単なる投資信託であり、米国のLPSの形でどんなに赤字が出ようとも日本の個人投資家にはマイナスが出ませんという取扱いを国税局が行ったということで大騒ぎになっているという記事が載っています。
これは本来個人が直接米国の不動産を投資すれば問題ないスキームなのですが、その間に外国証券会社が手数料を稼ぐためなのかどうかは別にしてLPSという組織体を入れたために、これ幸いと国税当局から指摘を受けている事件と言えましょう。
ちなみに米国内ではLPSは個人の集まりとして取り扱われますのでLPSの持分に応じて不動産を所有としての課税として扱われますが、日本ではどのような形になるのか国税当局の解釈の問題とも連動してくるのです。
はっきり言えば、米国においては最高裁判所の判断で税金が一番安くなるものを組み合わせることは国民の当然の権利であると認められているのに対し、日本では税金を安くすることを目的として行動すること自体は税法には不適切な行為であるという考え方が国税当局にあり、また税法の世界でもそのような考え方で解釈されているためにどうしてもトラブルが生じるという形を生んでいます。
この前も会社の分割をしようとしたのですが、それについて規定している税法の中に結果として税金が安くなるために会社分割をやった場合には、税法上はその分割をやった行為は取り消され、それだけの税金がかかりますという条文が載せられています。
日本がグローバル化というには、税法の取扱いが米国流の割り切った考え方になっていないため、税務に携わる者としてはどうしても税務当局とトラブルを起こさないようなところでしかアドバイスできない、非常に歯がゆい思いが致します。
大体、いわゆる節税策と呼ばれているものは誰かが思いつき最初に実行している。だんだんとその話が税理士などの会計事務所の間で話題にのぼるというか、私も全国の会計人が集まる勉強会の事務局をしていますが、そこに参加するとこういう事例にぶつかったというような話が時々情報交換されます。そして、ある程度一般化してくるともっと広範囲に広がります。その結果として、更にそれを商売のネタにしようとして、ささやきベースではなくパンフレットを作り一生懸命売り始める会社が出てきます。つまり広がっていくのです。
そうしますと税務当局が目をつけます。税務当局の論法は課税上弊害があるという言い方なのですが、課税上弊害があるというのは何かというととにかく税金が減る額が大きくなってくるということです。そうすると税務当局が何らかの理屈を考え出し、クレームをつけるということの繰り返しです。
節税を封じたいという考え方であれば、どんどん法律を変えていけばいいのであり、法的な安定性を侵される現在のあり方は大変まずいと思います。
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