LLP(有限責任事業組合)の説明会に出てきました。LLP(日本語では有限責任事業組合と言うことになったそうです)は経済産業省が中心となって日本に導入しようという新しいビジネスの仕組み、会社というか事業をやる単位です。アメリカなどでは大流行している制度です。
大流行している理由は簡単です。出資者(株主のようなもの)は有限責任制度です。有限責任ですから出資金以上の責任を追及されずに済む、且つ利益配分等は自由に決めてよいとのこと。組織が簡単ということもありますが、一番の売りは対外的には有限責任事業組合○××という一種の会社のような名前で事業活動をするのに対して、税法上はあくまでもそれぞれの出資者、要するにLLPで法人税を払うのではなく、それぞれの利益配分を受ける会社の方または個人の方でその本来の出資者の利益と加算されて課税される。端的に言えば、損は損失として利益は利益として利益配分を受ける、もともとの出資者で課税がされる制度だからです。人(他社)と組んで仕事はしたいが、儲けを会社に残しておきたくないという人向けの組織制度です。
これについては、LLPの法律は法律はとりあえず国会を通ったが、関係省庁との打ち合わせ、例えば登記の仕方や肝心な税法のやり方等の検討がまだなのでよくわからない、詳しい話はできない、実際に法律が施行されるのは9月以降になるであろうという話でした。
結局、税法規制だと思います。この税法が多分今の組合(例えば、土木建設事業等はよくジョイントベンチャー<JV>)という形で2社以上が一緒に仕事をすることが非常に多いのですが、そのような形に適用されているのと同じように税法が適用されるものと思います。そのような税法が適用されるとしても有限責任事業組合は、なかなか使い勝手が良さそうです。経済産業省が考えているパターンではなく、税金目的で多いに流行る気がします。詳しい解説が国税庁から公表されていませんのでわからないところもいくつかありますが、私はおもしろいなと思って見ています。
私が心を引かれたこと。まず、第一にLLPが商売のネタになると考えている人が多いとみえて、LLP説明会が商工会議所であったのですが、相当数の会計事務所やコンサルタントの方々が来ていました。それはそうですよね。こういう新しいものが出てきたときにそれをどういうふうに活用すれば自分の商売に役立つかということは、コンサルタント、特にこの場合は税金が法人税がかからずLLPの名前で商売をしながらもLLPの名前で人を雇ったり、売上をあげたり買掛金を計上しながらも、その税金はLLPが払うのではなく、親会社、その出資者がその利益配分の割合に応じてまず数字を確定し、そこで税金がかかるという制度ですから、出資者が会社であればLLPの黒字赤字を会社の利益と合算、赤字のときはマイナスし納税する。個人の場合も同じです。そういう制度ですから話としてはおもしろいことになります。これを使うと色々な節税商品が考えられます。
全ては実際上どのような税制が確認されるのかによって違うのですが。建設企業共同体(JV)のようなものが導入されれば非常におもしろい制度になるでしょう。経済産業省は経済の発展、産業振興に役立つようないろいろな事例を紹介していましたが、全然違う形、即ち節税商品として使えることは確実です。ただし、そのように国税庁が甘い対応をするかはわかりませんが・・・。
さて、おもしろかったこと。まずこの説明はこのLLPに関連する法案を企画し、法案作成をやっていたというどう見ても経済産業省のキャリア、30代の若いの女性が来て説明しましたが、なかなか知的美人できれいな方でした。多分東大を出てキャリアとして経済産業省に入り、鍛えられている方らしく、且つ女性的なやわらかさで説明されていました。こういう話はむさい男性にボソボソと説明されるよりきれいな女性からずばずばした説明を受けたほうが楽しいですよね。聞いているほうは50歳前後のむさくるしい男性200名ばかりでしたのでそちらのほうが目立っておもしろかったです。そういえば通産省の女性キャリアは最近は県知事等に人気があるらしく、たしか北海道知事、大阪府知事が経済産業省出身の女性知事だったと思います。
おもしろかったことの2番目。資本金1円から会社が作れるという話がありますが、これも経済産業省がやっている産業振興のやり方ですが、20000社くらい作る予定が22000社作れた、従って成功だったというような説明がありました。量で計るのかと思うとおもしろい話ではあります。
20000社のうち、どれくらいまだ生き残っているのかを知りたいと思うのですが、量はできたので次は成功事例の積み重ねという表現が出ておりました。LLPのように税務当局が嫌う、つまり、税収が減る仕組みを導入するのは経済政策というか産業振興を名目を求めないとなかなか難しいなと今回思った次第です。
さて、1円会社については「次は量より質の世界です」と言っていたのがちょっと笑えました。だいたい2000社のうち1社くらいが上場にこぎつけるそうですから。
本当に税制がどうなのかは注目点です。国税・税制を考える人たち、財務省の方の基本的な考え方は、税制は経済に中立であるべきだというものがあります。つまり経済を税制によっていじるという考えは本質的には間違いという考え方です。そこで税制を経済政策的にいじる、例えば、今は従業員に対する社員研修が減っているという事実があるので、これを従業員の研修にお金を使えば少し税金を負けましょうというような事例等は特定の産業政策目的で諸官庁、この場合は経済産業省ががんばったおかげでこういう制度が出来たのですが、私の身の回りのお客様の話では、使えるのであれば減税は受けたいから受けるが、減税があるからといって特に研修費を増やすつもりはないという話が圧倒的だったのが笑えました。
私は卒業後すぐに公認会計士の世界に入ったのですが、税制というのは徹底して影響を及ぼすのだなと思ったことを実感したのは、もうすぐ卒業して就職のためにアパートを探そうとしたときです(それまでは育英会の寮に入っていてアパートなど探したことがなかった)。アパートを探しに町の小さな不動産やさんに入ってみると奥に3人の人が座っていました。事務員の1人が、「専務、お客様です。」と呼びかけます。専務はまた、どう見てもその人の夫にしか見えない人に向かって社長と呼んでいました。お互いにどう見ても夫婦にしか見えないのにお互いを「専務」、「社長」と呼び合うのを見て思わず笑いそうになってしまいました。そして最後に仲介料を払うときに株式会社○○不動産と書いてあったのを見てこれが噂に聞く税金目的のために町の八百屋さんまでもが会社になってしまうという話なのかと思いました。その当時は法人事業であるか個人事業であるかは圧倒的に法人事業の方が有利、現在も法人事業が原則的に有利です。このパターンがおもしろいなと思いました。
私は、長期間続けようと思わない仕事、長く続けられるかどうかわからないような仕事は最初は個人でやった方が税制的に有利に税法のルールが変わりつつあると思っています。だからこそLLPに注目しているのですが。