最近の個人の資産運用では、変額年金保険を買われている方が多い。これは、もっぱら銀行から勧めれて大口の預金を取り崩して変額年金保険を買ったという話です。変額年金保険そのものは投資商品ですから、買われた方が理解して買われていれば問題ないのですが、どうもお話を聞いていると変額年金保険について、理解が十分でないような気が致します。
変額年金保険では、一定年齢から年金を受け取ることになっていて、その期間も固定期間(保証期間とも言います)もしくは終身という形です。
終身タイプの良いところは、長生きすればするほど得というところです。受け取る年金は、年金支払開始時までの資産運用の結果によって年金額が変わることになっています。
新聞などの報道を見ておりますと、あまり変額年金保険を否定するような記事はないのですが、この度、否定的な記事を見付けましたので参考としてご紹介させていただきます。それは、要約していえばこのような話です。
①変額年金保険の本質は、保険会社が更に投資信託の運用会社に委託して運用して貰っている、債券 や株式の投資信託であるということ。
②それに対して手数料が極めて割高ではないかと思われること。
③従って投資信託という商品に投資をしているという意識を持つ必要があること。投資者が預金口座から 預金を下ろして預金という確定利回り(値上がりもないが値下がりもない)商品から投資信託(販売名 称は変額年金保険)という商品に投資しているということを十分理解して投資する必要があるというこ と。
『保険は「死亡リスク」を補填する死亡保険と、「生存リスク」をカバーする年金保険があります。前者の保険はおなじみの問題ですから今回は「生存リスク」とそれの対策としての「年金保険」について考えてみます。
まず「生存リスク」とは何かの問題ですが、「予定年齢」を超えて長生きする時の経済的負担増をリスクと考えるものです。言い替えれば90歳までの、「予定年齢」までの資産しか準備されていなければ、それより長生きすればそれは予期せざる経済的負担増となります。
この準備がなければ、保険をかけておきたいというのが、「生存保険効果」を期待する年金保険の考え方です。
「生存保険効果」とは死亡した人には払わないという保険の仕組みであり、生存している少数者だけが貰えるわけですから、「死亡保険」とちょうど逆です。
死亡保険は「死んだ人」がもらえて死亡に伴う経済的損失をカバーします。逆に生存保険は長生きすれば長生きするだけ「生きている人」が貰える仕組みです。
終身保険とされるのが通常ですから極端な場合では120歳まで生きれば120歳迄もらえます。
人間の自然寿命は120歳といわれますからありえない設例ではありません。
これが「年金保険」ですから年金保険そのものは理論的には充分その契約をすることを検討に値する保険です。
問題はこうした長期の資金運用に保険会社が固定金利で応ずることは運用のリスクが高すぎることです。このため開発され提供されている保険が、運用資産の運用益は変動するタイプの「変額年金保険」です。通常「変額年金保険」の運用資産は「特別勘定」という別勘定にプールされ、そこで運用され保険金支払いに充当されます。通常の保険はその運用資産をこのように別勘定に分離されることなくプールされて保険会社自身で運用します。
保険会社だけでなく銀行もこの新商品には熱心ですが問題点もあるようです。
第一は手数料が極めて高いことです。
3種類の手数料が必要です。
保険契約関連費用 特別勘定積立金に対し 2.3%(最高?)~1.4%
資産運用関連費用 同上 0.7~0.5%(債券運用は比較的安い)
年金管理費 年金年額に対し 1%
最後の年金管理費は年金額に対するものですから資産運用の費用としては積立金残高に比例しませんが保険金支払い時にまで1%の手数料をとられるのですからゼロ金利に慣らされている最近では随分な手数料と感じます。
問題なのは前の2つです。保険契約関連費用は保険会社の取り分です。
資産運用関連費用はファンドの運用を専門会社に委託しますからその運用会社の取り分となります。それぞれは言い分もあるでしょうが払うほうは合計で最高3%です。年金受け取り開始前に10年間保険金を預けるまたは10年の保証期間があれば肝心の「年金保険効果」を期待する前に年金払いに充当される積立金が3割も目減りします。これでは本当に120歳くらいまで生きなければ「生存保険効果」など絵に描いた餅のたぐいです。
第2は保証期間の問題です。「保証期間」というと何となく恩恵みたいに感じますが、この期間は死亡した人にも払うという意味ですから肝心の「生存保険効果」機能を提供しない単純な投資信託の年金払いであり、「年金保険」の商品機能を提供していないことになります。この問題は死んだら損するという単純な契約者の感情からこうした「保証期間」が商品につかないと売れないそうですが、「年金保険」とは提供するサービスは何かの顧客教育が必要です。「保証」という言葉のマジックを持ち込まず、契約者もそれにだまされない知恵が必要です。
第3は運用対象です。外国株式や外債まで含む選択性です。「自由にお選びください」ということでしょうが「年金保険」としてはどうあるべきかの考え方を整理しておく必要がありそうです。第1は運用時代が契約者にとっては80歳~90歳以上の超高齢時代です。
答えは自ずから明らかです。重ねて指摘しますが年金保険に求められる機能は「生存保険効果」です。長生きしすぎるリスクに備えるには元本そのものに減少のリスクのある運用対象が必要なのか、また薦めるべきかについて、関係者が「自由にお選びください」ではあまりにも無責任です。
(㈱ファンジャパン FPニュースより引用)』
ここで言いたいのは、今、保険会社は3%、4%の運用も苦しい。つまり過去5%で約束していた生命保険契約の資産運用は出来ない。逆ざやであるということを訴えかけています。苦しんでいる理由は、預かったお金を一定の率、つまり3%~5%で運用していくと約束しているためだそうです(予定金利引き下げ問題)。これに対して、変額年金保険は結果次第ですから、プラス10%で運用すればその結果が、マイナス10%で運用すればその結果、つまり払い込んだ金額から増えた金額もしくは減った金額が年金として戻ってくるという仕組みです。つまり金融商品と見れば株式とか債券とかの投資信託の類似品として変額年金保険は考えるべきなのです。投資信託の教科書に必ず書いてある言葉は、いかに投資信託の運用手数料が低い商品に投資した方が有利か、運用手数料が高い商品だからといって運用利回りが実際は高くはない。手数料が高い商品も低い商品も結果的には運用の平均的結果は同じであると言うのがアメリカでの投資信託投資家への教科書に書いてある事です。これらに比べて日本の変額年金保険はいかがなものなのでしょうか。変額年金保険はバブルの時代に変額保険として登場した商品と受け取り方の違いで、一時金で貰うのが変額保険であり、受け取り方が分割で貰うのが変額年金保険と言っても間違っていないと思います。とすれば、株式の運用失敗の結果は当然、保険契約者が負うのですから、同じようなトラブルが将来起きないかどうか極めて心配されるところです。運用がうまくいけば、大いに年金額、受取額が増えます。しかし、今、日本の生命保険会社は3%以上で運用できないと言っています。従って、変額年金保険でのリスクは、契約者が負って下さいと言っています。自己責任という言葉の意味を投資家はしっかり噛み締める必要があると思います。
誤解されないように言っておきますが、欧米流の老後の年金準備というと、主力は変額年金保険だそうです。グローバルスタンダードは厳しいなぁ・・・・・。
なお ファンジャパンFANJAPAN http://www.fan.co.jp/ はプロにとって参考になる記事がつまっています。老後年金のことを考える視点を広げたいプロの人にお勧めします。
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