リッツ・カールトンと日本人の流儀

著者　高野　登
ポプラ社

この本の著者は前リッツ・カールトン日本支社長であり、リッツ・カールトン大阪や
リッツ・カールトン東京の開業をサポートしてこられた方です。ホテルの専門学校を
出た後渡米して、いくつかのホテルで経験を積みながら、日本の文化のすばらしさ
を活かした接客で、次第に周囲から認められるようになります。
　そして、多くの人たちとの出会いの延長上で、リッツ・カールトン初代社長と出会
い、リッツ・カールトン・サンフランシスコで働くことになります。
　その後、リッツ・カールトン大阪が開業することになり、日本支社長として、アメリ
カから日本に戻ってこられました。

　ホテルの仕事では、「お客様に対して気がつく力」が大切であり、例えば飲料を
ペットボトルで飲んでいると、グラスに水を注ぐしぐさがぎこちなくなるから、リッツ・
カールトン大阪のスタッフには、普段の生活でも飲料をグラスに注いで飲むように
習慣づけているそうです。もともと、日本の文化には容器に直接口をつけて飲む
という習慣はなく、湯呑茶碗やお猪口に注いでいただくのが、日本の美しい文化
ということです。

　リッツ・カールトンの仕事の流儀で面白かったのは、スタッフに１日二千ドル（約
十六万円）の決裁権があるという権利で、お客様に喜んでいただくためなら、現
場の判断で使用できるそうです。大事な書類の忘れ物であれば、新幹線に飛び
乗ってお届けすることもあるということです。

　また、本社の副社長の言葉で、自分の成長のための投資は、自分の年収の５
％ではなく、自分が目指す年収の５％というアドバイスがあったそうで、著者の印
象に残っているそうです。

　リッツ・カールトン大阪の成功は、著者がアメリカで学んだホスピタリティ（心に寄
り添う力）と、奥ゆかしくきめ細やかな日本のおもてなしの流儀の融合によってもた
らされたものということでした。

（紹介者：諸岡）