平成19年税法改正 再確認
Ⅳ.法人の事業継承対策 半分前進
次はもっと大きな改正が来るぞ・・・
オーナー企業経営者にとっての大きな悩みは、法人の株式の相続問題です。
1つは、会社の株式の相続評価が高いので相続税が重い。
もう1つは、子供(後継者)に株を引き継がせたいが、他の兄弟も色々相続で要求がありそうだ。後継者だけに大半の株を持たせられそうにない。
相続についての悩みのうち、相続税の金額の軽減ではなく、財産分けについての解決がやりやすくなる対応策が今回の税法改正に盛り込まれました。
具体的には、会社法で導入された新しい種類株式のうち3種類の株式の相続税評価のルールが明確化されました。
これにより、どういうことができるか。会社の経営権を引き継がせたい息子(長男)がいるとします。ただし、財産は他の兄弟がいるし、他にめぼしい財産がないので、会社の株は兄弟で分けなければいけません。
そこで、会社法で導入された拒否権付株式というものを発行する。後継者に持株数としては少なくても役員の選任等については拒否権が持てる、即ち、事実上会社を支配できる権利付の株式を発行できる。拒否権付株式は、配当をもらう権利は普通株式と同じなのですが、この拒否権付株式の所有者は役員選任の議決権の過半数を持っているのと同じです。即ち、会社の経営権の支配はできる。
その拒否権付株式は普通の株式と同様に評価することになりました。経営を支配する権利そのものは評価ゼロという扱いです。随分楽になります。
従って、少なくとも経営権だけは自分が思う子供に容易に引き継がせることができます。生前中に拒否権付の株式を後継者に贈与もしくは発行すればいいのですから。
また、社債類似株式や配当優先株式の無議決権株式なども相続の評価が明確化されましたので、将来、会社からお金をもらえる権利付の株式などの形で後継者以外の兄弟の相続の対応が可能となりました。
この他、相続時精算課税制度について事業承継のことを考えた多少の見直しが含まれています。
しかし、もっと大きな改正が予測されています。商工会議所を中心に農業相続と同じ制度を中小企業のオーナー会社の株式についても導入してほしいという要望があり、これについて国(自民党)も前向きに対応するという方向に切り替わりました。農業相続とは 例えば、農家の方は農業を20年間続けますと約束すれば実質的に評価ゼロで農地を相続することができます。
オーナー企業の株式についても農地と同じような制度がヨーロッパにはあるそうで中小企業庁が中心になって昨年来報告書を出し始めていました。
今後この方面の検討と改正が期待されています。